あの「早春の頃」に

子供の頃 

山の谷間を下りていくと 小さな池があった

きらきらと輝く清水が流れ

水面は風に波打っていた

冬は鏡のように氷が張り 

恐る恐る踏みしめた足元には

黒い闇が 

深く どこまでも対のように広がっているように思えた


「早春の頃」のように切ない思い出と共に

生きていくことに精一杯になるにつれ

気が付けば家族も増えて

いつしか輝く水面も記憶から遠ざかっていった


走り続けていた足をふと止めて

ゆっくり歩くことに戻った時

ふと思い出し あの谷間を探しにいった

あったはずの道は いつしか踏み場も無く

記憶を辿っても 輝く水面はもう消えてしまった


細い流れに腰を下ろし

底を掴んでも 

もうあのぬくもりは帰って来ない

でも この流れは  

今もこうして里に流れ続け

田畑や喉を潤し続ける

通りすがりの人たちが

あの池のことを知らないとしても

あの時を生きた人たちの胸には

今もこうして 輝く水面が流れている

そしてその流れは

これからも 次々と受け継がれていくだろう




      ( このうたを恩師に捧ぐ・・・ )
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by johgo-009 | 2013-02-12 20:58

家族全員歯型付き、おバカだけど憎めない「しし」の物語


by じょうご