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全部ボケたわけじゃない・・届いていたプロポーズ

老健施設にいた時の事。
認知症のおばあさんが入所された。
日本舞踊のような身のこなしで足を引きずるように歩く方だった。
冗談を言うと、おどけるようにツンとした表情でいけずな態度をされる。
クリアなんだか認知なのかよく分からない感じがした。
夜中の暗闇で突然ベッドで浦島太郎を歌いだすこともあった。

そして、日が経つにつれ、次第にADLが低下され、車椅子になり、言葉も自分からはあまり話されなくなった。
それでも、何かにつけては声かけし、話しかけていた。
認知症に慣れてきて、コツを覚えてきた頃、もちろん声かけの大切さも身をもって感じていた。
でもどこかで、どうせボケてるから覚えてないだろうと少しバカにしていた(というか、面白がっていた)所があったのかも知れない。
笑顔になって頂きたくて、冗談でその方に、「〇〇さん僕と結婚してくれませんか?」とか、「式はいつしますか?」とか、いつも軽い気持ちで言っていた。本人は無表情で反応も無かったし。

そしてある日、そのおばあちゃんの娘さんが面会に来られたので、何気なくその話をしたときだった。
「あ~、だからですか~!」
と、娘さんは納得されたように言われた。
え?どうされたんですかと尋ねると、
「この前来た時に母が、「私困っちゃったのよ~。プロポーズされちゃったのよ~。」って言ってたんですよ。」
と娘さんが話して下さった。

なんと本人は分からないどころか、真剣に悩んでいたのだった。
職員には話さないだけで、ご家族には普通に会話していたということなのか。
届いていたプロポーズ。
どうせボケているからという先入観は持たない方がいいんだなとつくづく思い、新しい発見でもあった。
認知症は人それぞれにみんな症状が違うし、まだらボケというのもあるので難しい。

ボケた中でも怒りもするし、冗談も言うし、おどけもする。
そして恋もするのだ。
by johgo-009 | 2012-11-20 22:44 | 泣き虫ケアワーカー | Comments(0)

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