認知症と母性本能

程度や症状によって違うが、認知症だからといって全ての感情が無くなるわけではない。
さっきまでのことはすぐに忘れてしまうけれど、本人は今、怒ったり泣いたり笑ったりと色々な感情は持っている。
自分も認知症なのに、他のお年寄りを見て、「あの人は呆けててかわいそうに。」「この中でまともなのは、あたししかいないのよ。」などと言ったり。
なかでも、お絞り作りや塗り絵などの作業中などは、出来る方が出来ない方を面倒見たりされるから不思議だ。それぞれの役割分担が自然に出来たりすることがある。
職員も、わざと困った振りをして利用者様に相談したりすると、親身になって作業を手伝ってくれたり、拒否が一時的に納まったりすることもある。

何年か前に認知症専門のフロアで働いていた時のこと。
夜勤中に介抱していた利用者様が朝方亡くなってしまい、日勤者との申し送りの時間前に居室でお焼香をしてきたとき。
仲間達がいるステーションには入らず、そのまま利用者様が休んでいた居室の中に入った途端、俺は泣き崩れてしまった。生前に交わした会話や笑顔を思い返したら思わずこみ上げてしまったのだ。
床にしゃがみこんで頭を抱え込んで顔を見られないようにして、声を押し殺すようにしていたら、その居室内に居た利用者様がベッド上で起き上がり、「仕事っていうのは色んなことがあるよな~。」っとずっと心配そうに声を掛けてくださっていた。
大の男が声を押し殺して泣いているのだ。男が偉かった頃の女性なら、確かに心配してくれるのも無理はない。
俺は、その優しい一言に余計に泣けてきたのを覚えている。
そのおばあさんは多少の認知症はあったものの、あまりよけいなことは話さないで、日常会話くらいしかしたことが無かったのに、その意外な一面にびっくりしたものだ。
認知症の方であっても、母性本能みたいなものはあるのだと思う。
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by johgo-009 | 2012-06-22 21:39 | 泣き虫ケアワーカー

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